歯ぎしり・食いしばりとは
歯ぎしり・食いしばりは、「ブラキシズム」と総称される、習慣的に歯や顎(あご)に過剰な力をかけてしまう行動です。睡眠中に起こるものと日中に起こるものがあり、多くの場合は本人の自覚がないまま進行します。
ただ「夜中に歯ぎしりの音がする」だけがブラキシズムではありません。音が出ないタイプの食いしばり(クレンチング)や、日中に上下の歯が触れ続ける癖(TCH)は気づかれにくく、歯や顎へのダメージは静かに蓄積されていきます。タイプを正しく把握することが、適切な対処への第一歩です。
ブラキシズムの4つのタイプ
- グラインディング 上下の歯をすり合わせるタイプです。ギリギリという音が出るため、家族や同室の方に指摘されて気づくことが多いです。睡眠中に多く起こります。
- クレンチング 歯を強くかみしめるタイプです。音が出ないため本人も周囲も気づきにくく、じつは最も多いとされています。起床時の顎のだるさや頭痛として現れることがあります。
- タッピング 上下の歯をカチカチと素早く当てるタイプです。3つの中では比較的まれです。
- TCH(歯列接触癖) 本来、食事や会話以外のとき上下の歯は接触していないのが正常です。しかし集中しているときやストレスがかかっているとき、無意識に歯を軽く触れさせ続ける習慣(TCH)が、じわじわと顎や歯に負担をかけます。
こんな症状は歯ぎしり・食いしばりのサインかもしれません
自覚がないまま進行するケースが多いため、以下のような症状が当てはまる方は一度ご相談ください。
- 朝起きると顎がだるい・疲れている・痛みがある
- 慢性的な頭痛・肩こり・首のこりがある
- 歯が以前より短くなった・すり減ってきた気がする
- 詰め物や被せ物が何度も割れる・欠ける・取れる
- 口を開閉するときにカクカク・ジャリジャリと音がする
- 口が大きく開かない・開けると痛む
- 仕事中や集中しているとき、気づくと歯を強くかみしめている
- 頬の内側に白い線状の噛み跡がある
特に「音が出ない」クレンチングやTCHは、症状が出るまで気づかれないことがほとんどです。「なんとなく顎が重い」「頭痛が続く」といった漠然とした不調も、歯ぎしり・食いしばりが原因であるケースがあります。
歯ぎしり・食いしばりが引き起こすダメージ
歯ぎしりや食いしばりの力は、食事中の噛む力を大きく上回ることがあります。この過剰な力が慢性的にかかり続けることで、口の中だけでなく全身にさまざまな影響が出ます。
歯の磨耗・破折
歯の表面を覆うエナメル質(人体で最も硬い組織)でも、継続的なすり合わせには耐えきれません。歯が徐々にすり減り(磨耗)、知覚過敏や歯の破折(ひび・割れ)につながります。一度すり減った歯は自然には戻りません。
詰め物・被せ物へのダメージ
セラミックやジルコニアなどの補綴物(ほてつぶつ)も、想定外の大きな力には耐えられず、割れたり欠けたりすることがあります。「せっかく入れた被せ物がすぐ壊れる」という方は、歯ぎしり・食いしばりが原因である可能性があります。
顎関節症
顎関節(耳の前あたりにある顎を動かす関節)に繰り返し過剰な負荷がかかると、関節内のクッション(関節円板)がずれたり、周辺の筋肉に炎症が起きたりします。「口が大きく開かない」「顎がカクカクする」「顎が痛い」といった顎関節症の症状として現れます。
頭痛・肩こり・全身への波及
顎を動かす咬筋(こうきん)や側頭筋は、頭・首・肩の筋肉とつながっています。食いしばりによってこれらの筋肉が慢性的に緊張すると、頭痛・肩こり・首のこりとして現れます。原因がわからない頭痛や肩こりが、実は歯ぎしりだったというケースは珍しくありません。
当院の歯ぎしり・食いしばり治療へのこだわり
歯ぎしり・食いしばりは、タイプや原因、症状の程度によって適切な対応が異なります。画一的な処置ではなく、お一人おひとりの状態に合わせた対応を心がけています。
① 睡眠中か日中か、タイプと状態をまず確認します
カウンセリングでは、症状が出る時間帯・生活習慣・ストレス状況・睡眠の質などを丁寧に伺います。口腔内診査では、歯の磨耗の程度・頬粘膜の噛み跡・顎関節の状態を確認します。必要に応じてレントゲンやCTで顎の骨・関節の状態も把握した上で、治療の方向性をご提案します。
② マウスピース(ナイトガード)で歯と顎を守ります
歯ぎしり・食いしばりの基本的な対応は、就寝中に装着するマウスピース(ナイトガード)です。上下の歯の間にクッションを挟むことで、歯への直接的なダメージと顎関節への過負荷を軽減します。マウスピースは歯ぎしりそのものをなくすものではありませんが、歯・補綴物・顎関節を守る有効な手段です。
当院では口腔内の型取りをもとにオーダーメイドで作製します。市販のマウスピースと異なり、歯列にぴったり合うため装着感がよく、長期間使い続けていただきやすい仕上がりを目指しています。
③ 噛み合わせの状態もあわせて確認します
噛み合わせのバランスが崩れていると、特定の歯や関節に力が集中しやすくなります。歯ぎしり・食いしばりの背景に噛み合わせの問題がある場合は、咬合調整(こうごうちょうせい:歯の当たり方を整える処置)や補綴物の修正を組み合わせてご提案することがあります。
④ 症状が強い場合はボトックスも選択肢のひとつです
咬筋(頬の噛む筋肉)が過剰に発達しており、マウスピースだけでは症状が緩和しにくい場合、咬筋へのボトックス(ボツリヌストキシン)注入を選択肢としてご提案することがあります。薬剤が筋肉の過剰な収縮を一時的に抑えることで、顎への負担・頭痛・肩こりの軽減が期待できます。効果の持続期間は概ね3〜6ヶ月程度で、効果が切れると元の状態に戻ります。詳細はカウンセリング時にご説明します。
治療の流れ
- カウンセリング・問診 … 症状・生活習慣・睡眠・ストレス状況などを詳しくお伺いします
- 口腔内診査 … 歯の磨耗・噛み跡・顎関節の状態を確認します
- 必要な検査 … レントゲン・CT撮影(顎の骨・関節の状態確認)
- 診断・治療方針のご説明 … タイプ・原因・対応方法をわかりやすくお伝えします
- マウスピースの型取り … 歯列に合ったナイトガードをオーダーメイドで作製します
- マウスピースのお渡し・装着確認 … フィット感・使い方を確認します
- 経過観察・調整 … 定期的に顎・歯の状態を確認し、必要に応じてマウスピースを調整します
- 症状に応じた追加対応 … 噛み合わせ調整・ボトックスなどをご提案することがあります
よくある質問
Q. 歯ぎしりは自分では気づけないのですか?
睡眠中のグラインディング(すり合わせ)は同室の方に指摘されて気づくことが多いですが、音が出ないクレンチング(食いしばり)やTCH(歯列接触癖)は、歯科医院での診査で初めてわかるケースが少なくありません。「朝起きると顎がだるい」「頭痛が続く」という方は一度ご相談ください。
Q. マウスピースをつくると歯ぎしりは治りますか?
マウスピースは歯ぎしり・食いしばりそのものをなくすものではなく、歯や顎関節へのダメージを軽減するための「守る」ための装置です。症状の緩和・歯の保護として有効ですが、根本的な原因(ストレス・噛み合わせなど)へのアプローチも合わせて考えることが大切です。
Q. 市販のマウスピースではいけませんか?
市販品はお手軽ですが、歯列に合わせて作製していないため、装着感が悪く長続きしにくいこと、噛み合わせのバランスが崩れる可能性があることなどが懸念されます。歯科医院でオーダーメイドで作製したものの方が、フィット感・安全性ともに優れています。
Q. 子どもの歯ぎしりも診てもらえますか?
お子さんの歯ぎしりは乳歯から永久歯に生え変わる時期に多く見られ、成長とともに自然に落ち着くケースがほとんどです。ただし症状が強い・永久歯に影響が出ているといった場合はご相談ください。小児歯科の観点からもあわせてご対応します。
Q. 治療費はどのくらいかかりますか?
費用は治療内容・症例によって異なります。カウンセリング時に詳しくご案内しますので、お気軽にご相談ください。
歯ぎしり・食いしばりのご相談はまずカウンセリングから
「朝起きると顎が重くて、もしかして歯ぎしりかもしれない」「詰め物がよく割れるので原因を調べたい」「頭痛や肩こりが続いていて、歯との関係を確認したい」という方も、まずは当院へお越しください。